本のある暮らし

読書ブログ

【本紹介】そして、バトンは渡された

おはようございます。

お久しぶりになってしまいました。

 

ここ最近、有難いことに仕事もプライベートも充実しており、

なかなか本を読む時間が取れませんでした。

充実してないから本を読む、ということでもないのですが。

ソーシャルディスタンスを保ちながら誰かといても、

ずっと誰かといるというのは私には少ししんどかったです。

1人が好きで、無音の部屋で一人本の世界に浸っているときが

この上なく心地いい。

その空間が心地いいと感じるとき、私は

『あぁ、疲れていたんだな』

と思います。

自分のメンタルを安定させる、そのくらい大切な時間なんだと

最近になって気付くことが出来ました。

 

 

 

さて、今日ご紹介する本ですが、先に少し感想を述べてしまうと、

読了した瞬間何とも言葉に表しにくい、だけど何となく

優しい気持ちに包まれている、そんな気持ちになりました。

ずっと気になっていたけど、積読になってしまっていた本。

なぜ今のタイミングで読む気になったのかは分からないけど、

何となく今読むべきだった本という感触がありました。

2019年に本屋大賞を受賞され、SNSでも多くの方が

ご紹介されている本です。

 

 

 

そして、バトンは渡された 瀬尾まいこ 文春文庫

 

そして、バトンは渡された (文春文庫)

そして、バトンは渡された (文春文庫)

 

 

 

 

 

 

ーーー

内容

ーーー

 

森宮優子。17歳。

 

母の死、父の再婚、そして父の転勤。

幼少のころから大人の都合で何度も家族形態がかわってきた。

周りの人に困ったことや辛いことは話さないとよく言われるが、

優子はこう思う。

 

『困った。全然不幸ではないのだ。』

 

そう。優子は不幸ではなかった。

7回も変わった『家族』皆に愛されていたから。

それぞれの大人が、それぞれの形で愛を注いでくれたから。

 

 

時は立ち、彼女自身が『家族』を持つとき、

彼女は何を思うのだろうーーー。

 

 

 

 

ーーー

感想

ーーー

 

・家族の形

 

優子の、父や母との距離感。

『お父さん』と呼ばずに、父になる人たちを○○さんと呼ぶ

のは、家族でありながらもやはりどこか他人だからでしょう。

作中、唯一母親としてかかわった人物も、ずっと『梨花さん』

と呼んでいる。

 

これまでの人生で、家族が変わるというのを経験したことが

ありませんが、一度だけ友達に言われた言葉があります。

 

 

“お父さんとお母さんが試合に毎回見に来てくれているのが

凄く羨ましかった”

 

 

私は中学校から卓球をしていますが、父と母はスポーツ観戦が

好きで、よく二人で試合を見に来てくれていました。

父に関しては、観戦好きが高じて、遠征試合や練習試合に行くたびに

車を出してくれることもありました。

応援してくれて、試合のたびにビデオだって撮ってくれる。

当たり前、とまでは思っていなくて感謝の気持ちも伝えてはいましたが、

友達からの一言を聞いて、

 

『あ、私の今の環境は当たり前じゃないんだ。』

 

と思うようになりました。

 

人それぞれに家族の形があって、人それぞれ家族との

関わり方があります。

凄く家族と仲が良くて、たくさん遊びに行く。

仲はいいけど、あまり普段語ったりはせず、

良い距離感を保っている。

ちょっと、親とは仲良くないかも。でも、嫌いじゃない。

 

世間的に『良い家族』という理想像が独り歩きしているような

気がしますが、良い家族とはなんでしょう。

私からすれば、本人たちにとって適切な距離感であるのであれば

それが『良い家族』だと思います。

家族に当たり前なんてない、読んでそう思いました。

 

 

 

 

・向井先生の存在

 

作中で好きな登場人物の一人。

 

『その明るさは悪くないと思うけど、困ったことやつらいことは話さないとつたわらないわよ。』

 

先生や大人が良くも悪くも、よく言いそうなセリフ。

今でもそうですが、私自身はこの言葉を頂いても、あまりそういう話はしません。

話したところで変わらない、と思ってしまうから。

 

 

 

作中、高校の中で優子と友達の萌絵がケンカし、クラスメートにも

その影響が広がってしまうシーンがあります。

高校生の頃の、友達とケンカしたときの胸がざわめく感じ。

社会人になってから周りと正面から向き合うことが少なくなり、

あまり感じることがなくなった感情を久しぶりに味わいました。

 

このときも向井先生は優子に声を掛けますが、優子はこう言います。

 

“こういうの、時間が解決するし。今少し折り合いが悪くなっているだけで、

ほっておいてというか、その、まあ見守っててください。”

 

 

冷静というか、強いというか。

ああ、優子になりたいと思うと同時に、この言葉を受けて

優子の気持ちを尊重して見守った向井先生。

本当に時間が解決して、時間はかかったものの優子と萌絵は

仲直りします。

大人だからって、子供のことになんでも首を突っ込んでいいわけじゃない。

子供には、子供なりの解決方法がある。

 

 

最後、優子が高校を卒業する時、向井先生はクラス全員に手紙を配ります。

そんなことをするような先生ではなさそうだから、クラスの皆はざわめき、

手紙を読んで、自分のことをよく見てくれていたと言います。

大人というのは、私たちが気付かないだけでよく見てくれている。

それは逆もしかりで、子供たちも大人のことをよく見ています。

 

優子の手紙に書かれていた言葉が、向井先生の言葉の中で

一番好きな言葉です。

 

あなたみたいに親にたくさんの愛情を注がれている人はなかなかいない。

 

優子のありのままを受け入れ、優子の強さを受け入れた向井先生の言葉。

もっと大人になった時、向井先生のようになりたいとおもいました。

 

 

 

・それぞれの父親

 

血のつながった父親、水戸秀平。

二番目の父親、泉ヶ原茂雄。

三番目の父、森宮さん。

 

 

泉ヶ原さんは静かに、近くもなく遠くもない距離感で優子を見守り、

森宮さんはあれやこれやと『父親』という責任を果たそうと家事を行う。

でも、どの父親も無理をしているわけではなく、ただそれがその人にとっての

父親像であり、優子との良い距離感だったのだろう。

 

森宮さんとの生活が一番長かったわけだが、最後、優子の結婚式に

来ていた血のつながった父親、水戸秀平のことを優子は『お父さん』と

呼んでいる。

あぁ、そうか。

どれだけ離れていても、どれだけ会えなくても

やっぱりお父さんはお父さんなんだ。

そう思いました。

 

 

 

ーーー

最後に

ーーー

 

何度も家族の形が変わっても、名の通り優子の優しさは変わっていません。

それはきっと、どの家族も優子に対してたくさんの愛情を注いでいたから。

 

家族の在り方、人との関わり方。

自分の中にある固定概念をゆっくりと、じんわりと溶かしていってくれる

そんな作品でした。

 

 

 

 

P.S.

 

最近、ブログの書き方に迷っていていろいろ試していましたが、

なかなかしっくりこず…。

どんな風に書いたらいいのだろうと思っていましたが、

自分の好きなように書けばいいか、と自己完結してしまいました。

 

私は、私の為に書く。

だから皆さんも、自分の為に読んでください。

自分のペースで、読んでください。

 

 

 

 

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。