本のある暮らし

読書ブログ

【本紹介】凍りのくじら

こんばんは。

昨日までの寒さは少し和らぎましたが、

さすがに寒くなりましたね。

室内と室外の寒暖差が激しいため、

体調管理にはなお一層気を付けないといけない…。

 

 

 

ここ数日、どうしても誰とも話したくない日が

続いていました。

でも、孤独を望んでいるわけではないんです。

 

1人でいたいけど、一人でいたくない。

誰かと話すのはしんどいけど、誰かと一緒にいたい。

 

そんな、何とも言えない感情を心に抱えていました。

 

 

 

この感情は今回に限ったことではなく、たまに私の

心を覆います。

多分、一人じゃないことを知って安心したいのでしょう。

 

1人暮らしなので、誰かと一緒に居ることが叶わないことのほうが

多いですが、そんな時は本を読みふけります。

本はいつだって寄り添ってくれる。

今年は年末年始もコロナウイルスの影響で実家に帰らない予定なので、

年末年始に読む本をそろそろ準備しようと思います。

 

 

 

1人の私に寄り添い、感情を与えてくれた本を

ご紹介します。

 

 

 

凍りのくじら 辻村深月 講談社文庫

 

凍りのくじら (講談社文庫)

凍りのくじら (講談社文庫)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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内容

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“二代目” 芦沢光。25歳。

自然を取ることを中心に活動する新進気鋭のフォトグラファー。

 

 

「あなたの描く光はどうしてそんなに強く美しいんでしょう」

 

そう聞かれると、彼女は決まってこう答える。

 

「それは、暗い海の底や、遥か空の彼方の宇宙を照らす必要があるから。」

 

 

 

 

 

五年前、小学六年生のとき、父親が失踪した。

藤子・F・不二雄を「先生」と呼び、先生の作品を愛していた父。

 

高校生になった理帆子は、どこにいても

“少し・不在”

そして、理帆子の母は

“少し・不幸”

 

父によく懐き、ドラえもんが大好きだった。

先生の一言でSFが好きになり、自分の中でいつも

“スコシ・ナントカ”と人の個性を表し、遊んでいた。

 

ある日、図書室で一人の青年から「写真のモデルになってほしい」

と依頼を受ける。戸惑いつつも、彼と関わっていくうちに

誰にも見せられなかった内面を見せていく理帆子。

そして、少しずつ迫っていた黄色と黒の警告。

 

 

人との関わり、家族との関わり、その中で見え隠れする人の本性。

それぞれに与えられた“道具”の中で、それらが私たちを照らすとき、

人は本当の意味で「自分」を知る。

 

 

 

 

 

 

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感想

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・様々な“光”と“影”

 

人は誰しも、光と影を持ち合わせていると私は思っています。

そして、光の部分が多いと願い、影の部分と葛藤する。

自分の弱さ、不甲斐なさを他人に見せぬよう、必死に取り繕い、

歯を食いしばる。

 

 

本作の中で、理帆子の母は癌により長い闘病生活を送っています。

あまり上手くいってなかった理帆子と母。

日に日にやせ細っていく姿を見て、理帆子が何度も恐怖と戦い、

涙を隠すシーンがあります。

私はすぐに泣いてしまうので理帆子に対して

「もっと素直になってよ」

と言いたかった。

影の部分、自分の弱さを周りに見せてよ、と。

 

そして、更に強い影を持つ理帆子の元カレ、若尾。

だんだんと本性を現す若尾に対して、恐怖心を抱きながらも

きっと現実にも若尾のような人がいるのだろうと思いました。

自分の弱さを認められず、傷つくことに恐怖を抱いている。

人を馬鹿にすることでしか、自分を保つことが出来ない。

 

愚か、と思いつつも、自分自身はそうなっていないだろうか?

と振り返りました。

若尾ほどではないにしても、心の中で小さく、気付かないほどに

人との関わりを疎かにしていなかっただろうか。

そう思いました。

 

 

誰もが持つ、光と影。

光の部分が強くなれば、自然と影も濃くなってゆく。

光ばかりに目を向けるのではなく、影の部分にも目を向け、

きちんと向き合っていきたいと思いました。

 

 

 

 

・理帆子の母

 

先ほども述べたように、理帆子の母は癌により約二年の

闘病生活を送ります。

ある日、出版社の飯沼という男性が、母の元を訪れます。

 

「芦沢さんの代表作となるような作品集を作りたいと思っています。」

 

 

理帆子と母の間でも、話すことさえなかった父親の写真集。

断るかと思っていた母は、それを引き受けます。

 

そして最後、出来上がった作品を見て、理帆子は涙を流します。

 

母からの、父と理帆子へのメッセージ。

女性として、母として、妻として、生涯を生きた母「汐子」の

メッセージが胸に刺さりました。

 

 

いつか、人は命の灯を失います。

大切な人の灯が消えるとき、後悔しないために、

当たり前と思わず一緒に居られる時間を大切にしよう。

そう思いました。

 

 

 

 

 

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最後に

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人間は、美しくもあり弱い生き物。

感情の少なかった理帆子が、だんだんと感情的になっていくのが

とても印象的でした。

 

 

凍りのくじらを読んだのは、今回で二回目になります。

以前読んだときにはラストシーンに感動しましたが、

今回はまた違ったシーンで涙を流しました。

 

同じ本を読んでも、その時の自分の状況、環境によって

胸に刺さるシーンが変わってきます。

 

 

 

だから、何度も読みたくなってしまう。

感情の起伏の少ない私が、唯一生きていると実感できるのが

本を読んでいる時間です。

 

 

 

辻村深月さんは、私の中で一番好きな作家さんで、

全ての本を読みました。

これからまた、辻村深月さん期間に入りそうです。

 

 

ぜひ皆さんも辻村深月さんの作品を一度読んでみてください。

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。